殺人未遂 帰省した大学生の弟を刺殺した兄 非正規・フリーターへの偏見
クリスマスから正月にかけて、帰省して家族と集まる人は多いと思います。
親類と遠く離れて帰ってきたら、自分の成長した姿を見せ、優越感にひたれることもあるでしょう。
ただ、逆に、失職や借金、生活保護など、家族と暗い雰囲気になりそうな事情を抱えた人間にとっては、あまり気分の良くない時期かもしれません。
そんな中、リアルが充実し、明るい気分で帰省してきた大学生である弟と、低収入のフリーターで実家暮らしをしていた兄が口論になり、殺人未遂事件を起こったようです。
兄と弟、どちらが喧嘩をけしかけたのかは不明ですが、自分の社会的な地位を侮辱されたことに怒りを爆発させた兄の凶行という見方が、多勢を占めるそうです。
リア充への嫉妬という犯行理由もありますが、それなら殺人を起こすまでにはならないでしょう。
非正規・フリーターである自分の存在自体を否定されたことの方が、よほどきついはずです。
血縁者の怨みは、第3者の他人よりも凄まじいものがあります。
最も身近でなかなか縁を切れない存在だからこそ、裏切られたときの憎しみが増大してしまうのです。
一般的に、高校を出て、大学生になると、なかなかサラリーマンの心情を理解しにくいです。
参考になるのは、せいぜい、メディアがつくった偏見混じりの情報か、バイトで見た社員の様子です。
就職活動で、面接官の人事と新卒大学生の食い違いが、ニュースで話題になるほどひどいのは無理もありません。
経験がないのですから、学生本人にとってはどうすることもできません。
『ゆとり世代』という造語や労働の仕組みを勝手につくり、それを修正できる力を持つのは、中年超えの権力者だけですから、ペーペーの若い新人には抗いようがないのです。
こうして、この国は、時代遅れの教育・就職制度のレールに乗った無知な大学生を、毎年、多く量産していきます。
昔は、一般の殺人罪より重く処罰する尊属殺人という規定がありました。
これは、現代では削除されていますが、父母と同列以上の血がつながった家族を殺したときに、死刑か無期懲役の罪の2択しか選べないほどの重罪とみなされていました。
それほど、家族を同じ血縁者が殺害することをタブーだとしてきてわけです。
しかし、人生何が起こるか分かりません。
仮に、優秀な弟が就職に成功しても、会社の不正に巻き込まれ、犯罪者にされることもありますし、事故で障害者になるかもしれません。
もしくは、災害で死んでしまうことだってあるのです。
フリーターでも、ニート・引きこもりに比べたら、よっぽどマシだと思います。
底辺の争いだと馬鹿にする人もいますが、開き直ればそれで終わりです。